介護施設を運営する中では、利用者の方と利用契約書を取り交わしたり、重要事項説明書を交付する必要等があるため、契約書と無縁で施設を運営することはできません。
契約書や重要事項説明書等の書面は、本来、施設運営上欠かせない重要な書面であるにも関わらず、専門の業者やインターネットなどで入手したテンプレートをそのまま利用していたり、必要な見直し、改定等を行わずに放置されているケースも少なくありません。
今回のコラムでは、顧問弁護士による契約書のリーガルチェックの重要性について解説したいと思います。
顧問弁護士による契約書のリーガルチェックとは
契約書のリーガルチェックとは、法的な観点から、契約内容に、法令違反・潜在的なリスク・不利益な条項等がないか検証・チェックする業務のことを言います。
単に「契約書チェック」、「契約書レビュー」などと呼ばれることもありますが、内容は同じものです。
基本的なことではありますが、契約は一度締結されると、法的に様々な拘束力が生じますので、後から、「やっぱりあの条項はまずいから変えたい」と思っても、契約は相手方当事者の同意なしに一方的に変更することはできないので、契約締結前、すなわち契約書を作成する段階で、事前にしっかりと検証することが大切となります。
契約書のリーガルチェックの重要性
法令違反を防ぐ
介護施設における利用契約書や重要事項証明書等には、法令上、必ず盛り込まなけばならない事項がありますので、必要な事項が記載され、法律の要件を満たしているか確認する必要があります。法令違反があると、最悪、指定取消し等の行政処分をうけるおそれがありますので、当たり前のことですが法令は遵守しなければなりません。そして、法令には改正がつきものですので、法改正等があれば、必要に応じて適宜内容をアップデートしていく必要もあります。
また、よくあるケースとして、運営規定は内規にあたるため、契約書そのものではありませんが、施設の運営規定の中に、実際に施設で実施している事項について記載がなかったり、その逆に、施設で実施しなくなった事項の記載がそのまま残っているということがあり、それが原因で行政から指摘を受けるというケースもあります。
被害を最小限に抑える
契約書が物を言うのは、実際にトラブルが発生した場面です。利用者やご家族とトラブルが起きないように、また、トラブルが発生した際には、問題が大きくなる前に事態を収拾するのが望ましいのですが、どうしても話し合い等で折り合いが付かない場合や、理不尽な要求には、契約の内容がしっかりとしてさえいれば、「契約でこうなってます」と相手の意見を突っぱねることも可能となります。最終的に訴訟に発展した場合にも、契約内容がしっかりとしていれば、被害を最小限に抑えることができます。
予防法務・カスハラ・クレーム対策
施設運営上のリスクを最小限に抑えたり、利用者やご家族の方と良好な関係を維持するためには、施設・介護スタッフ側だけではなく、利用者やご家族の方にも守って頂きたい事項というものがあるはずです。
そのためには、単にテンプレートの重要事項説明書を漫然と使用するのではなく、施設を安全に利用し、良好な関係を維持するために必要な取り決め・約束事を重要事項説明書にしっかりと盛り込むことが重要となります。
利用者の方からのカスハラやクレーム対応の相談や指導を行う際に、よくよく問題の原因を調べていくと、重要事項説明書の内容が施設の実情にマッチしていなかったり、また、重要な事項の説明が相手にしっかりと伝わってないことが原因となっているケースも少なくありません。
予防法務、カスハラ・クレーム対策には、契約の内容をしっかりと精査するのはもちろん、「そんな話しは聞いてない」、「それは施設の問題だからこっちはしらない」等のクレーム・争いに発展しないように、重要な事項をしっかりと相手に伝え、お互いの約束事として、協力して頂く体制を構築することも大切となります。
おわりに
今回のコラムでは、顧問弁護士による契約書のリーガルチェックの重要性について解説しましたが、いかがだったでしょうか。顧問弁護士によるリーガルチェックでは、単に契約書作成時のリスク管理・検証だけではなく、法改正や施設の実情に合わせた定期的なアップデート、契約書等の重要事項を伝える際のポイント等のレクチャーを受けることで、しっかりとした予防法務体制を構築していくことが可能となります。
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