前回、前々回のコラムでは、介護保険法で定められている多様な介護事業の紹介として、自宅で受ける介護サービスや、施設に通ってサービスを受ける通所型のサービスについて解説しました。今回のコラムでは、利用者の方が施設で生活してサービスの提供を受ける、施設サービスについてまとめて解説したいと思います。
介護老人福祉施設
介護老人福祉施設とは、要介護認定を受けた方がそこで生活するための施設です。社会福祉法人や地方自治体が運営している公的な介護施設となります。介護老人福祉施設では、入浴、排せつ、食事などの日常生活のサポートや機能訓練、健康管理や療養上のサポートなどを提供します。
介護老人福祉施設と特別養護老人ホーム(いわゆる特養)は、名称は異なりますが、基本的に提供するサービスに違いはありません。
「特別養護老人ホーム」という名称は、老人福祉法上の名称であり、介護保険法上は「介護老人福祉施設」という名称です。同じ施設を指しても根拠法が異なるということです。
老人福祉法における「特別養護老人ホーム」のうち、入所定員が30人以上のものを介護保険法上では「介護老人福祉施設」といい、入所定員が29名以下の場合は、「地域密着型介護老人福祉施設」といいます。(島しょ部など例外もあります)。
老人福祉法における「特別養護老人ホーム」は、都道府県知事の認可が必要となります。入所定員が30人以上の「介護老人福祉施設」は、介護保険法に基づく都道府県知事の指定を受ける必要があるため、「指定介護老人福祉施設」とも呼ばれます。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、要介護認定を受けた方のうち、病状が安定していて入院治療の必要がない方が入居する施設です。
入院治療の必要がなくなった方は、治療等が必要でない以上、病院から退院せざるを得ないことになりますが、高齢者の方が退院してすぐに自宅で生活するというのも現実的には難しい面もあるため、そのような方を受け入れ、在宅復帰を目指せるよう、リハビリテーションを中心に必要な医療、看護、介護を行う施設が介護老人保健施設ということです。いわば、入院治療と自宅療養の“橋渡し”的な施設というわけです。
介護老人福祉施設と介護老人保健施設の違い
役割が異なる
介護老人保健施設は、前述のとおり、入院治療と自宅療養の橋渡しをするのが目的となりますので、提供するサービスは医療的ケアやリハビリなど、在宅復帰を目指すサービスが中心となります。また、居室や生活に必要な設備を備えているのはもちろん、リハビリや医療的ケア用の設備が充実しているのも特長となります。
介護老人福祉施設は、要介護の方が、身体介護や生活支援を受けて、居住するしそこで生活することが目的となるため、提供するサービスも日常生活を送るための自立支援サービスが中心となり、設備も、居室、浴室、トイレ、食堂など、日常生活に必要な設備がメインとなります。
入居期間が異なる
介護老人福祉施設は、在宅復帰のためのいわばリハビリ施設となるため、入居期間には制限があり、原則として3ヶ月〜6ヶ月までとなっています。
それに対して、介護老人福祉施設には入居期間の制限はありませんので、終身利用も可能であり、終の棲家とする方も少なくありません。
介護医療院
介護医療院は、要介護高齢者の長期療養・生活のための施設です。要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護および機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設です。
長期的な医療と介護が必要な高齢者を対象に、日常的な医学管理や看取りやターミナルケアなどの医療機能と、生活施設としての機能とを兼ね備えています。
介護医療院は、簡単に言うと、介護と医療の両方が必要な方に、その両方を提供する施設となります。
まとめ
介護老人福祉施設は、要介護高齢者の方のための『生活施設』です。
介護老人保健施設は、要介護高齢者の方にリハビリ等を提供し、在宅復帰を目指す、病院と自宅との『橋渡し的施設』です。
介護医療院は、要介護高齢者の方に医療と介護の両方を提供する『長期療養・生活施設』です。
おわりに
今回のコラムでは、介護保険法で定められている多様な介護事業の紹介として、利用者の方が施設で生活してサービスの提供を受ける、施設サービスについてまとめて解説しましが、いかかだったでしょうか。
介護関連の施設は、名称が似ているため、よく混同されがちではありますが、それぞれの施設の役割をしっかりと理解すると、自ずとそこで提供するサービスの違いも見えてくるのではないでしょうか。
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