介護弁護士コラム

第7回介護弁護士コラム 介護事業と労働基準法

介護は、その業務の性質上、利用者の方の日常生活全般におよび、また、万が一があれば利用者の方の身体・生命の安全にも影響する行為なため、介護保険法等により、様々なルールが設けられています。介護事業者は、事業として介護を行っている以上、雇用しているスタッフがいるはずであり、従業員を雇用する際には労働基準法も遵守する必要があります。今回のコラムでは、介護事業と労働基準法との関係について解説するとともに、介護事業者が見落としがちな法律違反についても解説したいと思います。

介護事業と労働基準法

労働基準法とは、労働条件の最低基準を定めた法律であり、すべての労働者に適用されます。雇用している従業員がいる場合には、原則として、どのような業態の事業所でも適用がありますし、介護事業であっても雇用している従業員がいれば、当然、その適用を受けます。

労働基準法に違反した場合、使用者は労働基準監督署による是正勧告を受けるだけでなく、ケースによっては刑事責任を問われるおそれもあります。

さらに、介護事業者の場合には、労働基準法違反により刑罰(罰金刑)に処せられた際には、介護サービス事業者の指定取消しとなってしまうことがあるため、特に注意が必要となります。

つまり、安定的に介護事業を継続するためには、労働基準法の遵守が必須となります。

 

介護事業者が見落としがちな法律違反

介護施設の1人夜勤

誤解されている方も少なくありませんが、介護施設で1人夜勤となった場合、それが直ちに法律違反となるわけではありません。介護施設の種類や利用者の方の人数に応じて定められている夜間の人員配置基準を満たしている場合には、1人夜勤自体は違法ではありません。

ただし、労働基準法上、6時間を超えて勤務する場合には、休憩時間を与える必要があり、また、休憩時間は自由にできることが必要となります。

1人夜勤のケースでは、利用者の方の状況次第では、適切な休憩時間がとれなかったり、休憩時間を自由に使えない状況が想定されるため、その場合には労働基準法違反となってしまうことになります。

移動時間に対応する給与

訪問介護事業所では、登録しているヘルパーさんに実際の介護を依頼しているというケースが少なくありませんが、労働法上、「移動時間」も労働時間にあたるため、事務所と利用者宅との移動時間中の賃金も支払う必要があります。

移動時間に見合った適切な給与を支払っている場合には問題ありませんが、移動時間等を無視して、一回当たり一律の賃金を支払っている場合には、ケースによっては労働基準法違反になるおそれがありますので、注意が必要となります。

 

おわりに

今回のコラムでは、介護事業と労働基準法との関係について解説するとともに、介護事業が見落としがちな法律違反についても解説しましたが、いかがだったでしょうか。介護事業者の方は、介護事業を営んでいる以上、介護に関する法令をしっかり遵守するのは当然ですが、意外と見落としがちなのが、労働基準法です。介護に関する法令は遵守しているのに、労働基準法違反によって指定取消しになるということがないように、労働環境を調え、安定した事業運営を行いたいところです。

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