介護弁護士コラム

第8回介護弁護士コラム いまさら聞けない夜勤と宿直の違い

前回のコラムでは、介護事業と労働基準法との関係を解説するとともに、労働基準法違反によって指定取消しになるということがないよう、労働環境を整えることの重要性を解説しました。今回のコラムでは、労働基準法関連の疑問に踏み込み、夜勤と宿直の違いについて基本的な事項を解説したいと思います。

夜勤とは

夜勤とは、夜の時間帯に勤務することをいいます。

夜勤は、文字通り、夜間に業務を行うことから、深夜割増賃金の適用があり、午後10時から翌朝5時までの深夜時間の労働については、通常の賃金の25%増の割増賃金を支払う必要があります。

また、夜勤は、日勤とは働く時間帯は異なりますが、日勤と同様に通常業務を行いますので、勤務時間は法定労働時間(週40時間・1日8時間以内)に含まれますし、勤務時間に合わせた適切な休憩時間も設ける必要があります。

宿直とは

宿直とは、夜間に泊り込みで働く勤務形態のことをいいます。

宿直も、夜勤と同様に夜に働くという点では共通していますが、宿直は『泊まる』ことが前提となっていますので、仮眠室や宿直室のような睡眠設備が必要となります。また、宿直の業務は、基本的にあくまで緊急時の対応業務を行う、いわば待機要員という扱いになりますので、夜勤のように通常業務をすることはできません。

そして、宿直を行う場合には、事業主が労働基準監督署へ許可申請を出し、その許可を得る必要があります。労働基準監督署の許可がない場合には、その勤務は「宿直」とは認められないため、通常通り、夜勤として扱い、法定労働時間等の適用を受けることになります。

夜勤と宿直の違い

夜勤は、勤務時間は夜間ですが、通常の業務を行うため、その業務を行うことについて特別な許可等は必要ありません。

それに対して、宿直を行う場合には、法律で定める要件を満たした上で、労働基準監督署の許可を得る必要があります。上述の、睡眠設備の設置も、宿直の許可を得る際に必須の要件となります。

宿直を行うためには、労働基準監督署の許可が必要ですが、その許可を得た特殊な勤務形態になるため、法定労働時間外の労働という扱いにすることができます。つまり、通常の勤務(法定時間内の労働)+宿直勤務というかたちで働くことが可能です。また、宿直(宿日直)には、いわゆる36協定等の適用がありませんし、割増賃金の支払等も必要ありません。

ただし、宿直には宿直のルールがありますので、例えば、宿直は、週1回までの勤務回数となりますし、宿直には宿直手当を支払う必要があります。宿直手当は、施設内で宿直業務に就く人の平均賃金(日額)の1/3以上の手当てを支給する必要があります。

宿直勤務の許可条件

夜勤ではなく宿直という扱いになると、事業者側からすると、労働基準法の様々なルールの適用を回避できますが、その反面、宿直の許可条件は厳しいものとなっています。

宿直は、緊急時に備えての待機というのが基本的な業務となりますので、通常の業務を行うことはできません。定期巡回や緊急時の連絡などの軽度の作業のみが宿直時の業務として認められます。

福祉施設の場合では、上記の定期巡回や緊急時の対応以外では、少人数の入所者に対して行う夜尿起こし、おむつ取替え、検温等の介助作業であって、軽度かつ短時間の作業に限られるとされています。なお、通達によると、短時間というのは1回の所要時間が通常10分程度で、1勤務中に1〜2回程度、また、夜尿起こしであっても要介護者を抱きかかえる等、身体に負担がかかる場合は含まれないとしており、宿直として可能な業務は著しく限定されています。

おわりに

今回のコラムでは、夜勤と宿直の違いについて基本的な事項を解説しましたが、いかがだったでしょうか。夜勤も宿直も夜に働くという点では共通しますが、宿直は、労働基準監督署の許可が必要な特殊な勤務形態であり、様々な労働基準法上のルールの適用がない反面、宿直ならではの許可条件等を守る必要があり、特に、福祉施設の場合には、宿直として行うことのできる業務が限定されているというのが、今回のコラムのポイントとなります。

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